SpaceXAIでGrok Botを開発しているエンジニアが、自分自身の開発チームをGrok Botで運用している記録を読みました。かつては15体のクラウドエージェントを手動で管理していたのが、今では200体以上を1人で回しているといいます。
数字のインパクトよりも、個々のやり方の地に足のついた設計が印象に残ったので、内容をまとめておきます。
5体のボットが「専門ドメイン」を持つ組織
チームは5体の「エンジニアボット」で構成されています。モバイルの共有基盤とiOSを担当するBaltata、DesktopクライアントとCI/CDを担当するShaoruru、インフラと所有者不明の不具合調査を担当するHogan、Androidを担当するCraig、ハーネス自体を担当するQuill。互いの領域を横断して動くこともできますが、それぞれ別のメモリと限られたコンテキストしか持たず、担当領域に絞って動くほうが良い結果を出すと書かれていました。
子エージェントに作業を分割委譲し、親は編成役に徹するというサブエージェント・オーケストレーションの発想と重なりますが、分割の単位が1回のタスクではなく「ドメイン」で、常設のチームとして固定されている点が特徴的でした。
夜間監査は、範囲が区切られた自動化
毎晩3時、ボットたちはデッドコードの一掃、アプリ起動時間の改善、バンドルサイズの削減、セキュリティ監査、国際化対応の抜け漏れチェック、複数クライアント間の機能差分チェックといった作業をこなします。どれも目的とスコープがはっきりしていて、朝には「今日レビューすべきPRのセット」という具体的な成果物が残るそうです。
いちばんお気に入りの指示として、「今夜6時間ある。好きなものを作ってみて。楽しんで」というプロンプトも紹介されていました。
自動マージの線引きは、確信度とブラストレディウス
ボットはPRのレビューを実行したあと、確信度が高くブラストレディウス(影響範囲)が小さい場合だけ自動マージし、そうでなければ人間の判断に戻すと書かれていました。自動化するかどうかを一律に決めるのではなく、確信度と影響範囲という2つの軸で線を引いているところに、実務で鍛えられた基準を感じました。
JennyというOps専任ボットと、毎朝5時の1on1
コードを書かない唯一のボットとして、Ops担当のJennyがいるという話も印象に残りました。毎朝5時、Jennyは全ボットと1on1を行い、プレイブックを見直し、詰まっている点を洗い出し、目指している空気感を再確認します。ボットがミスをしたときは根本原因分析とポストモーテムを行い、プレイブックを更新して他のボットにも変更を共有します。
人間のチーム運営で使われる1on1やポストモーテム、プレイブックの更新を、そのままボット組織の運用に持ち込んでいる形です。コンテキストの上限にすべてを詰め込めない以上、日次のリマインドが反復の代わりになる、という説明が具体的でした。
P0対応にはただし書きがついていた
急ぎのタスクには「P0」と伝えると、5分おきに進捗を確認して積極的に軌道修正する専用の運用に切り替わるそうです。ただし本文には「思っているよりずっと速くトークンを消費するので、本当に緊急なときだけ使うように」という注記も添えられていました。
まとめ
- 200体という数字よりも、ドメインごとにボットを固定し専門性を保つという分割の仕方が参考になった
- 夜間監査は常時稼働ではなく、目的とスコープが明確な範囲限定の自動化だった
- 自動マージは確信度とブラストレディウスの2軸で線を引く
- 1on1・ポストモーテム・プレイブックという人間のチーム運営の道具を、そのままボット組織にも持ち込んでいる
- P0のような緊急対応には、トークン消費への注意書きが添えられていた
参考