Claude Codeのスラッシュコマンドを、いつも同じ5個くらいしか打っていない。公式ドキュメントの一覧には100個以上が並んでいるので、一度自分の作業の流れに沿って並べ直してみた。ついでに、チャットから使うときとターミナルから使うときで一覧が違う件も整理しておく。
コマンドの扱われ方を先に知っておく
個々のコマンドの前に、共通の挙動を3つ押さえておくと迷いが減る。
メッセージの先頭でしか認識されない。 文章の途中に /compact と書いても、ただの文字列として渡る。コマンド名の後ろに続けたテキストは引数として扱われる。
スキルだけはチェーンできる。 v2.1.199以降、/skill-a /skill-b やっといて のように書くと、先頭に並べたスキルがすべて読み込まれ、末尾のテキストが各スキルへ引数として渡る。最大6つまで繋げられる。
応答中に打つとキューに入る。 Claudeが喋っている最中に送ったコマンドは、そのターンが終わってから実行される。ただし /status /tasks /usage のような一部は、応答を止めずにその場で走る。作業を眺めながらコストを確認したいときに使える。
リポジトリに入った最初のセッションで打つもの
新しいリポジトリで最初にやることは、だいたい決まっている。
/init— スターターのCLAUDE.mdを生成する/memory— 生成されたCLAUDE.mdを開いて手で直す/mcp— そのプロジェクトで必要なMCPサーバーを設定する/permissions— 承認ルールを決める。毎回聞かれて鬱陶しいコマンドはここで通す
/init は叩き台を作るだけなので、/memory で手を入れるところまでがワンセットになる。ここを雑にすると後で毎回同じ説明をする羽目になるので、最初のセッションで一番時間をかける価値がある。
タスク中に効くもの
作業に入ってから使うのは、モデルとコンテキストの制御が中心になる。
/plan— Plan Modeに切り替える。大きめの変更の前に挟む/model— 使うモデルを変える/effort— 推論をどれだけ厚くするかを変える(low〜max)/context— 今コンテキストウィンドウを何が埋めているかを表示する/compact— 会話を要約して空ける/btw— 本流を止めずに脇道の質問をする
自分がよく効くと感じたのは /context と /btw の2つだ。/context は「なんか重いな」と思ったときに中身を見せてくれるので、/compact を打つ前に一度挟むと判断がつく。/btw は「これ関係ないけど聞きたい」を会話履歴に残さず処理できるので、本流の文脈を汚さずに済む。
並行して走らせるもの
1つのセッションで待っているのがもったいないときに使う。
/tasks— バックグラウンドで動いているものを一覧する。完了したサブエージェントも含む/background— セッションごと切り離してバックグラウンドで走らせ、ターミナルを解放する/batch— 大きい変更を独立した単位に分解し、それぞれを別のworktreeで走らせる
/batch はコードベース全体にまたがる修正、たとえば「全ファイルのimport順を直す」みたいなときに向いている。worktreeごと分かれるので、互いに踏まない。
出す前に通すもの
レビュー系はコマンドが複数あって紛らわしいので、違いを書いておく。
/diff— 変更内容を表示する/code-review— diffの正確性のバグとクリーンアップを見る。--fixを付けると検出結果をそのまま適用する/review— GitHubのPRに対する高速な単一パスのレビュー。読み取り専用/security-review— diffのセキュリティ脆弱性を見る/code-review ultra— クラウドでマルチエージェントのレビューを回す
普段は /code-review で足りる。/review はPRに対する軽い確認、ultra は腰を据えて見たいときという住み分けになる。
セッションをまたぐもの
/clear— コンテキストを空にして新しいタスクを始める。プロジェクトメモリは保持される/resume— 前の会話に戻る/branch— 今の地点で会話を分岐させる/teleport— Webのセッションをこのターミナルに引き込む/remote-control— このローカルセッションを別のデバイスから続ける
/clear と /compact は用途が違う。同じ話を続けるなら /compact、話題を切り替えるなら /clear だ。迷ったら「この後の作業で前の話を参照するか」で決めればいい。
何かおかしいときのもの
/rewind— コードと会話をチェックポイントまで巻き戻す/doctor— インストールと設定の問題を診断する/debug— ランタイムの問題を診断する/feedback— セッションのコンテキストを添えてバグを報告する/usage— セッションのコストとプランの使用状況を見る
/rewind は「AIに壊されたコードを戻す」ためだけのものではなく、会話の一部を要約する使い方もできる。
チャットとターミナルで使えるコマンドが違う
ここが今回一番はっきりさせたかったところだ。デスクトップのチャットUIから / を打つと、上に挙げたコマンドの大半が出てこない。/model も /config も /permissions も /resume も無い。
理由はシンプルで、これらがターミナル上に対話UIを描くタイプのコマンドだからだ。モデル選択の画面も、権限設定の画面も、セッション一覧も、ターミナルに描画されることを前提に作られている。チャットには描画先がない。
チャットでもそのまま使える組み込みコマンドは、実際に数えたら13個だった。
/autocompact /btw /clear /compact /context /goal /mcp /pause-memory /recap /reload-plugins /reload-skills /skill-doctor /usage
これに加えて、/init /code-review /security-review のようなバンドルスキル(実体はMarkdownの手順書)と、自分で書いたコマンドが並ぶ。逆に言えば、画面を出すコマンドはターミナル専用と覚えておけば大体合う。
もう一段ややこしいのは、アカウント側のフィーチャーフラグで出し分けられているコマンドがあることだ。/autofix-pr や /heapdump がそれにあたる。フラグが立っていないと、打っても動かないのではなく、一覧に存在しない。同僚と画面を見比べて「そのコマンド無いんだけど」となるのはこれが理由になる。
実務上の結論はひとつで、チーム内の手順書に組み込みコマンドを書かないほうがいい。「まず /config で設定して」と書いた手順書は、チャットから入った人の手元で1行目から詰まる。共有するなら、環境によらず動くところに寄せる。
自分で足したコマンドはどこでも動く
.claude/commands/ や .claude/skills/ に置いた自作コマンドは、中身がMarkdownの手順書なので、ターミナルでもチャットでもクラウドセッションでも同じように呼べる。
自分の場合はObsidian Vault側に /kb-compile /kb-report /kb-lint を、このブログ用に /blog を置いている。使う側では意識していなかったが、これらがどこからでも動いていたのは、対話UIを持たない形式だったからだった。逆に言えば、チームに配る前提なら最初からこの形で書けばいい。組み込みコマンドを覚えてもらうより、リポジトリに置いた手順書を1個共有するほうが確実に届く。
並列開発に踏み込むならターミナルに居る
コマンドの話の延長で、エージェントチームにも触れておきたい。複数のClaude Codeインスタンスをチームとして協調させる機能で、まだ実験的扱いのため環境変数で有効化する。
{
"env": {
"CLAUDE_CODE_EXPERIMENTAL_AGENT_TEAMS": "1"
}
}
サブエージェントとの違いは、チームメイト同士が直接やり取りする点だ。サブエージェントは結果をメインに返すだけだが、チームメイトは独立したコンテキストウィンドウを持ち、共有タスクリストとメールボックスを通じて互いに通信する。サーバーワークスの入門記事が、この差を「部下」と「それぞれの専門領域を持つプロジェクトメンバー」と表現していて分かりやすかった。
そして、これもターミナル前提の機能になっている。
- チームメイトの選択と切り替えは、プロンプト下のエージェントパネルで上下矢印とEnter
- リーダーが自分で実装を始めるのを止めるDelegate Modeは Shift+Tab
- 各チームメイトを別ペインに出す分割ペインモードは tmux か iTerm2 が必要で、VS Codeの統合ターミナルやWindows Terminalでは動かない
操作系がキーバインドとペインでできているので、チャットからは回せない。自分はチャットUIから入ることが多いが、並列で走らせる日はターミナルに移ると決めた。
運用面で拾っておきたかったのは次の点だ。
- チームサイズは3〜5人から。チームメイトあたり5〜6タスクが目安で、独立した15タスクなら3人が出発点になる
- ファイルの所有権を分ける。同じファイルを複数人が編集すると上書き競合が起きるので、担当ディレクトリを指示に明示する
- まず読み取り専用のタスクから。並列コードレビューなら競合のリスクがない
- チームメイトはリーダーの会話履歴を引き継がない。ただし作業ディレクトリの
CLAUDE.mdは読む - コストは人数に比例する。チームメイトのモデルにSonnetを指定すれば抑えられる
4つ目が、前の節と同じ話に行き着く。人間のチームメイトにもAIのチームメイトにも、確実に渡るのはリポジトリに置いたファイルだけだ。会話の中で共有したつもりの前提は、どちらにも届かない。並列度を上げるほど、CLAUDE.md と .claude/ に何を書いてあるかが効いてくる。
棚卸しして変わったこと
結局のところ、100個を覚える必要はなかった。作業の流れに沿って並べ直すと、常用するのは各フェーズに2〜3個ずつで、合計しても15個くらいに収まる。むしろ収穫は、コマンドを覚えることではなく、環境によって使えるものが変わる前提で手順書を書くようになったことだった。
一覧そのものは公式ドキュメントにまとまっているので、全部見たい場合はそちらが正確だ。