結論から言うと、主要な AI コーディングツールが、ほぼ同時期に「拡張の公式ルート」を揃え始めた。
- Cursor — 公式プラグインの仕組みと、Compile カンファレンス(6月16日・サンフランシスコ)
- OpenAI Codex — スキルカタログの公開
- Claude Code — セキュリティガイダンスプラグインのリリース
Anthropic の Skills に続き、OpenAI と Cursor も「AI は仕組みで動かす」方向に本腰を入れている。ここでは、それぞれ何が変わったかをまとめメモとして残す。
Cursor — 公式プラグインが来た
Cursor の公式プラグインリポジトリが公開された。Cursor 側の 告知 でも、公式プラグインの仕組みが来たことが示されている。
何が変わるか
これまで Cursor の拡張は、プロジェクトごとの .cursor/rules や個人の Skills、MCP など、場所と形式がばらつきがちだった。プラグインは 公式の仕様に沿った拡張単位 としてパッケージ化できる。
リポジトリの構成は、マーケットプレイスの marketplace.json と、プラグインごとの plugin.json、その下に skills/・rules/・mcp.json を置く形だ。
plugins/
├── .cursor-plugin/
│ └── marketplace.json # マーケットプレイス一覧
├── plugin-name/
│ ├── .cursor-plugin/
│ │ └── plugin.json # プラグイン個別のマニフェスト
│ ├── skills/ # SKILL.md
│ ├── rules/ # .mdc
│ ├── mcp.json
│ └── README.md
同梱されている公式プラグインの例:
| プラグイン | 概要 |
|---|---|
| continual-learning | トランスクリプトから AGENTS.md を段階的に更新 |
| create-plugin | 新規プラグインのスキャフォールドと検証 |
| cursor-sdk | @cursor/sdk を使った自動化・CI 連携 |
| pr-review-canvas | PR 差分を Canvas でレビュー向けに整理 |
| orchestrate | クラウドエージェントを並列で動かすオーケストレーション |
「エディタ AI の機能を、自分好みに足す」が公式ルートになった、という理解でよい。Claude Code のプラグインや Codex のスキルと、思想は近い。
Compile — 6月16日・サンフランシスコ
プラグイン公開とあわせて、Cursor は 6月16日 にサンフランシスコ(Fort Mason)で1日限りのカンファレンス Compile を開催する。告知 でも触れられていたイベントだ。
- 形式: 1日・招待制(invite-only)
- 対象: エンジニア、研究者、デザイナーなど、ソフトウェアの未来を本気で考えるビルダー
- 登壇者(発表済み): Michael Truell(Cursor)、Dan Shipper(Every)、Pieter Levels、Claire Vo(ChatPRD)、Sam Lambert(PlanetScale)、Ryo Lu(Cursor)、Farhan Thawar(Shopify)ほか
招待を受け取っていない場合は、ウェイトリスト から登録できる。チーム参加や招待の譲渡は [email protected] への連絡で対応、という FAQ も掲載されている。
Chalkboard Stage では Call for Papers を受け付けている。黒板とチョークだけを使い、ゼロからアイデアを組み立てるライブ形式。例として挙げられているトピックは次のとおり。
- コアシステムを一から組み直す視点
- 作ったものから得た、痛みを伴う教訓
- AI ネイティブ開発の新しいメンタルモデル
- 複雑な概念をシンプルに説明する
プラグインの仕様公開と Compile の開催が重なっているのは、Cursor が「ツール」から「エコシステム+コミュニティ」へ広げている、という読み方もできる。
OpenAI Codex — スキルカタログの公開
OpenAI の skills リポジトリで、Codex 向けのスキルカタログが公式に公開された。
何が変わるか
Agent Skills は、指示・スクリプト・リソースをフォルダにまとめ、AI エージェントがタスクごとに発見して使う仕組みだ。OpenAI はこれを 「一度書けば、どこでも使える」 能力パッケージとして位置づけている。
インストールは Codex 内の $skill-installer から行う。名前指定や GitHub のディレクトリ URL 指定に対応している。
$skill-installer gh-address-comments
$skill-installer install https://github.com/openai/skills/tree/main/skills/.experimental/create-plan
インストール後は Codex の再起動が必要、という点は Anthropic / Cursor 系と同様の運用感がある。
「プロンプト職人」からの卒業?
毎回同じ手順をチャットで説明し続ける必要が減る、というのが実感としてのメリットだ。ただし Skillsを入れればAIは賢くなるわけではない で書いた通り、カタログに並んでいるから効くわけではない。自分の文脈に合うスキルを選び、足りない部分は自作する、という使い方になる。
Claude Code — セキュリティガイダンスプラグイン
Claude 側では セキュリティガイダンスプラグインがリリースされた。告知 では、Anthropic 社内で広く使われてきた仕組みが一般公開された、と説明されている。
3段階でレビューする
フック経由で動き、コードを3つのレベルで見る。
| タイミング | 内容 | コスト |
|---|---|---|
| ファイル編集時 | eval、危険な DOM API、ワークフロー編集などのパターンマッチ |
モデル呼び出しなし |
| ターン終了時 | そのターンで変わった差分を別モデルがセキュリティ観点でレビュー | 追加のモデル利用 |
| コミット/プッシュ時 | 周辺コードも読むエージェント的レビュー | 追加のモデル利用(時間あたり上限あり) |
注入、認可バイパス、SSRF、弱い暗号など、文字列マッチでは拾えない問題を後段でカバーする。
組織固有のルールも足せる
.claude/claude-security-guidance.md に脅威モデルやチェックリストを書くと、モデルレビューに追加コンテキストとして読み込まれる。.claude/security-patterns.yaml で、編集時のパターンマッチも拡張できる。
インストール例:
/plugin install security-guidance@claude-plugins-official
/reload-plugins
チーム全体で有効にするなら、.claude/settings.json の enabledPlugins に書く。
Anthropic 社内では、このプラグイン導入後に セキュリティ関連の PR コメントが 30〜40% 減った、というベンチマークが共有されている。完全なコードレビューの代わりではなく、PR に届く前に問題を減らす軽量な第一段階、という位置づけだ。
3つを並べて見ると
ざっくり整理すると、こうなる。
| ツール | 拡張の単位 | 公式が用意したもの | 自分で足すもの |
|---|---|---|---|
| Cursor | Plugin(skills / rules / MCP) | cursor/plugins | 自作プラグイン、プロジェクト rules |
| Codex | Skill(フォルダ) | openai/skills | $skill-installer や自作スキル |
| Claude Code | Plugin(hooks ベースなど) | security-guidance ほか公式マーケット |
Skills、.claude/ 配下のルール |
共通しているのは次の点だ。
- 拡張が公式仕様になった — 個人のプロンプト術に依存しにくい
- 再利用可能なパッケージ — チームやリポジトリで共有可能
- 段階的な開示 — 常時すべてを読み込まず、必要なときだけ起動(Skills の Progressive Disclosure と同型)
アーキテクチャの属人化を防ぐ で書いた「判断基準を Skill として残す」話とも接続する。プラグイン/スキルは、AI が知らない自社固有の知識や、毎回ハマる手順を載せる場所として使うのが筋がよい。
逆に、業界標準の一般論だけを詰め込むとノイズになる。カタログや公式プラグインは「土台」で、本当に効くのは自分の文脈に合わせた追加だ。
まとめ — どういうときに使うか
- Cursor のプラグイン — rules・Skills・MCP を1パッケージにまとめ、チームやマーケットプレイスで配布したいとき
- Codex のスキルカタログ — 繰り返し作業を定型化したいときの出発点。自社の手順や制約は自作スキルで足す
- Claude Code のセキュリティガイダンス — エージェントにコードを書かせる場面で、PR 前にセキュリティの粗を減らしたいとき。組織ルールは
claude-security-guidance.mdで上書きできる
拡張に載せるのは AI が知らないこと・毎回説明していること。載せれば賢くなるわけではなく、何を載せるかの設計が効き方を決める。